元嬪に養子を迎えるとは?
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イ・サン第60話。
妹・元嬪洪氏(ウォンビン ホンシ:원빈 홍씨)が亡くなり、洪国栄(ホン・グギョン:홍국영)の悪行がますます苛烈を極めるころ、皆様如何がお過ごしでしょうか?(笑)
さて、ホン・グギョンは妙な口実を付けて、元嬪に養子を迎えることになります。この荒唐無稽とも取れるホン・グギョンの提案は史実でしょうか?
実は史実なのです。
イ・サンの異腹弟・恩彦君(ウノングン:은언군)の長男・常溪君 李湛(サンゲグン イ・ダム:상계군 이담)、のちの完豊君(ワンプングン:완풍군)です。のちのというのは、ホン・グギョンによって改名されるからです。
イ・サンの兄弟についての詳細説明は以前イ・サンの兄弟で説明していますので割愛しますが、恩彦君(ウノングン)は3歳違いで一番歳の近い男子の兄弟です。恩彦君(ウノングン)・常溪君(サンゲグン)親子ともども、この提案は非常に迷惑な話で、そっとしておいて欲しかったに違いありません。王族というのはこのように為政者に利用される運命にありました。
どんな美辞麗句を並べても、このことはホン・グギョンの欲望以外の何物でもありません。ドラマを見ていてもわかるように、1779年時点では庶子も含めてイ・サンには子がいませんでした。そんな状況下で亡くなった後宮にとは言え養子を取れば、正式にではないにしろ王位継承権第1位になる可能性があるのです。
その後の安東金氏が勢道政治を行った状況を見てもわかるように、王は有力な外戚の一存で決められました。元祖勢道政治のホン・グギョンにとっては、イ・サン亡き後に完豊君(ワンプングン)を即位させることなどたやすいことでした。
ホン・グギョンがイ・サンを暗殺してまでそれを成し遂げようとしたかどうかは定かではありません。当時の記録にそのようなものはないため、そこまでは考えていなかったのでしょうが、彼がイ・サンを暗殺してしまえば、すぐにでも王の外叔父になれたわけです。
そして、常溪君(サンゲグン)の名を完豊君(ワンプングン)へ変えているあたりに、その野望の尊大さが垣間見えます。『豊』という字は自身の本貫・豊山洪氏(プンサンホンシ:풍산홍씨)から取ったものです。自身の家門から王を輩出するという野心がこの字に現れています。
本人の意志に反してホン・グギョンの野心の結晶となった完豊君(ワンプングン)は、数奇な運命をたどることになります。そのお話はまた後日紹介します。
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