正祖イ・サンの商業改革の意図とは?
2015/09/26
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イ・サン64話。
イ・サンの商業改革が本格的に開始されました。
ドラマを見ていると「庶民を思った改革して素敵な王様ね!」というイメージですが、この商業改革は別の側面も持っています。
若干日本と比較しながら朝鮮の商業とイ・サンの改革について紐解いていきましょう。
そもそも朝鮮の商行為は国の統制下に置かれており、市廛(シジョン:시전)と呼ばれる国が公認した商人にしか商行為が許されていませんでした。この権利のことを禁乱廛権(クムナンジョングォン:금난전권)といいます。これにより朝鮮書記には商業に秩序と安定をもたらしていました。
けれど、16世紀末から17世紀初頭にかけて日本や中国の清から国土を蹂躙される侵略を受けると、都城に人が大量に流入することとなります。
そうなると、需給ギャップも生まれ、固定された場所にしか無い市廛の商店では利便性も悪く、必然的に乱廛(ナンジョン:난전)という非公認の商店が形成されてきます。ざっくりとわかりやすく言うと、政府公認スーパー(市廛)V.S.違法コンビニ(乱廛)というような図式が成立しました。
こうなると、独占販売権により結託して価格を吊り上げ利益を貪っていた市廛(シジョン)は黙っていません。違法行為を行うイレギュラーな商人たちを取り締まるように国に働きかけ、時には自らが取り締まりを行いました。当然、市廛(シジョン)には警察権はありませんでしたが、それがまかり通っていました。
あえて国と表記しましたが、この頃の国とはまさに老論(ノロン)です。市廛商人たちは老論と結託することで富を築き、その築いた富を老論へ還元し、持ちつ持たれつの関係を構築していました。日本の時代劇に出てくる「そちも悪よの~」という悪代官と越後屋の関係と解釈するとわかりやすいでしょう(笑)
イ・サンの商業改革には庶民の生活向上を考えての意図もありましたが、当然この悪循環を断ち、老論(ノロン)を弱体化させる意図もあったのです。そして、以下の3つの一連した改革を行いました。
丁未通共(チャンミトンゴン:정미통공) 1787年(正祖11)に一部市廛(シジョン)の禁乱廛権(クムナンジョングォン)を廃止し、自由販売を許可した通共発売政策。
辛亥通共(シネトンゴン:신해통공) 1791年(正祖15)に蔡濟恭(チェ・ジェゴン:채제공)の発案で、市廛の国役(御用聞き)は存続させつつ、禁乱廛権とその権利に因る専売権(都價権:トガクォン:도가권)を廃止した通共発売政策。設立30年未満の市廛は廃止された。
甲寅通共(カビントンゴン:갑인통공) 1794年(正祖18)六矣廛(ユギジョン)以外の他の市廛が持っていた禁乱廛権の特権を廃止し、自由商人と手工業者たちも都城内で商行為を自由に行うことを許可した通共発売政策。
ドラマ内では蔡濟恭(チェ・ジェゴン:채제공)主導のもと六矣廛(ユギジョン:육의전)の国役をそのままにした政策を描写していましたので辛亥通共(シネトンゴン)を説明していたと思われます。けれど、ドラマ内はまだ1780~1781年のはずなんですけど・・・(汗)
ま、それは置いといて、六矣廛(ユギジョン)は国家の役、例えば清への朝貢の品や宮廷内の調度品を揃えたりする役目を担っていました。六という数字からもわかるように、国で扱う6タイプの商品については特定の市廛(シジョン)から納品させ続けました。その詳細は以下の通りです。
- 線廛(ソンジョン:선전)絹商店
- 綿布廛(ミョンポジョン:면포전)綿布店
- 綿紬廛(ミョンジュジョン:면주전)綿紬店(布の一種)
- 紙廛(ジジョン:지전)紙商店
- 苧布廛(チョポジョン:저포전)苧布店(布の一種)
- 內外魚物廛(ネウェオムルジョン:내외어물전)鮮魚店
漢城府には三大市場がありました。七牌(チルペ:칠패)・梨峴(イヒョン:이현)・雲従街(ウンジョンガ:운종가)です。一番有名なのはドラマでもよく登場する雲従街ですね!現在の鐘路(チョンノ)4を中心とした一帯です。
この雲従街(ウンジョンガ)。一体どのくらいの規模だったのでしょうか?ドラマのイメージではとても華やいだ場所に思えますね。ちょっと面白い比較があるので、それを紹介しましょう。
イ・サンの祖父・英祖(ヨンジョ)の時代の官吏に金仁謙(キム・インギョム)がいます。彼は通信使として日本に赴き大阪についた時、「鐘路(チョンノ)の万倍も上」と、その規模の大きさに度肝を抜かれています。それだけ朝鮮では市廛(シジョン)による独占が強く、商業が未発達だったことが読み取れます。(詳しくは韓国歴史の方に記述しています)
歴史的にはこの一連の改革でようやく朝鮮の商業が発達し始めます。その意味でもイ・サンの功績は大きかったと言えます。けれども、1800年に迫るまで、朝鮮においては商業は未発達で、しかもその後は商業改革が完全に停止していることも留意すべきところです。
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